
香川県出身の高校1年生・なおかさんは、「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」の第11期生として、シンガポールに2週間留学しました。
探究テーマは、「多民族国家シンガポールから、多様な巡礼者が四国遍路をしやすい環境づくりを学ぶ」こと。
現地ではCEC(Canadian Education College)で英語を学びながら、CECの在校生を対象としたアンケートや、シンガポールのJTBへのインタビューを実施しました。さらに、書道・折り紙と知育菓子を紹介する2回のアンバサダー活動にも挑戦。そこで見えてきたのは、外国人旅行者を迎えるうえでの「食の多様性への対応」と「必要な情報を分かりやすく届けること」の重要性でした。
留学中、なおかさんはさまざまなアクセントの英語に触れ、相手の話を聞きながら必要な質問をする力を身につけていきました。同時に、一人で街を歩き、公共交通機関を使い、調査先を訪ねる経験を重ねたことで、行動力と自立心も大きく育ちました。
今回は、留学テーマを決めた背景から、CECでの授業、現地で発見した課題、これからトビタテに挑戦する高校生へのアドバイスまで、詳しくお話を伺いました。
なおかさんの留学概要
- 出身:香川県
- 学年:高校1年生
- プログラム:トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム 第11期
- コース:社会課題探究コース
- 留学先:シンガポール・CEC
- 期間:2週間
- 探究テーマ:多民族国家シンガポールから、多様な巡礼者が四国遍路をしやすい環境づくりを学ぶ
自分が歩いた四国遍路を、社会課題につなげたい
なおかさんが探究テーマに選んだのは、地元・四国の文化である「四国遍路」でした。

テーマを考えるうえで出発点になったのは、なおかさん自身がお遍路を体験したことです。自分が実際に歩いたからこそ感じた魅力を、海外の人にも知ってもらいたい。その一方で、言語や宗教、食文化が異なる外国人が四国遍路をする場合、どのような不便や戸惑いがあるのだろうという疑問を持ちました。
お遍路というと、宗教的な巡礼という印象を持つ人も少なくありません。しかし、歩きながら地域の自然や文化、人との出会いを体験する旅としての側面もあります。
なおかさんは、お遍路の宗教的な意味だけに焦点を当てるのではなく、さまざまな文化的背景を持つ人が参加できる「観光・文化体験」として、どうすれば魅力を伝えられるのかを考えました。
当初の渡航先はマレーシア。受け入れ先探しから始まった留学計画
最初からシンガポールへの留学を考えていたわけではありません。当初は、同じく多民族国家であるマレーシアを候補にしていました。
しかし、マレーシアの受け入れ機関へ連絡しても返信が得られず、計画を変更する必要がありました。そこで知人から、「初めて一人で海外へ行くなら、移動がしやすく、治安面でも安心でき、多様な民族や文化が共存するシンガポールも探究先として合っているのではないか」と助言を受けました。
こうしてなおかさんは、渡航先をシンガポールへ変更しました。
計画どおりに進まない状況で、テーマそのものを諦めるのではなく、「何を学びたいのか」という中心軸を残して場所や方法を組み直す。この時点から、なおかさんの挑戦は始まっていました。
日本人スタッフへの相談から現地生活まで、CECが留学をサポート
シンガポールで通う語学学校を探す際、なおかさんが重視した条件の一つが、日本人スタッフの存在でした。初めての海外一人旅であることを考え、困ったときに日本語でも相談できる環境が必要だと考えたためです。
エージェントから紹介を受けて選んだのが、シンガポールの語学学校CECでした。
CECには日本人スタッフの松本さんが在籍しており、状況に合わせて柔軟に対応してもらえたことが、大きな安心につながったといいます。
今回の受け入れでは、日本語での相談対応に加えて、宿泊先の案内や現地生活のオリエンテーションも実施しました。慣れないシンガポールでの生活をスムーズに始め、授業や探究活動に集中できるよう、学校として生活面も支えました。
英語だけで生活することは、語学力を伸ばすうえで大切です。一方、慣れない土地で学びと探究活動を両立する高校生にとって、必要なときに日本語で相談でき、生活面の案内も受けられる環境は、次の行動に踏み出すための支えにもなります。
「Don’t be shy」間違いを恐れずに話せる授業
CECでは、Intermediateクラスで授業を受けました。留学当時の英語力は、本人の認識では英検準2級程度。日本では文法を中心に学んできたため、授業を受ける中で、会話で使える単語量やコミュニケーション力がまだ不足していると感じたそうです。
CECの授業で特に印象に残ったのが、先生から繰り返し伝えられた次の言葉でした。
Don’t be shy.
恥ずかしがらずに、話してみよう。

授業では発言やスピーキングの機会が多く、間違いを恐れずに声を出すことが求められました。少人数のクラスだったため、分からないことがあれば先生が近くで個別に教えてくれる場面もありました。
また、授業や日常生活では、イギリス英語やアメリカ英語だけでなく、インド系・中国系など、さまざまな背景を持つ人が話す英語に触れました。
最初は、日本で聞き慣れた英語との違いに戸惑いました。それでも毎日耳にするうちに少しずつアクセントに慣れ、街での会話や買い物でも、相手の言葉を聞き取れる場面が増えていきました。
多国籍なCEC生徒へのアンケートも探究活動の一つに
なおかさんは探究テーマに関連して、CECの在校生を対象としたアンケートも実施しました。

さまざまな国や地域から集まった生徒が学ぶCECの環境を活かし、多様な背景を持つ人の意見に直接触れる機会を設けました。学校の中で得た声と、外部で行ったJTBへのインタビューを組み合わせることで、四国遍路をより多角的に考える探究活動になりました。
2回のアンバサダー活動で、書道・折り紙と知育菓子を紹介
CECでは、日本文化を紹介するアンバサダー活動を学校のアクティビティとして計2回実施しました。
なおかさんは書道歴10年で、高校では書道部に所属しています。その経験を活かし、1回目のテーマには「書道・折り紙」を選びました。2回目のテーマは「知育菓子」です。ほかの生徒にも参加してもらえるよう、活動を知らせるポスターのデザインにも挑戦しました。
普段何気なく親しんでいる折り紙や、自分で作る工程を楽しむ知育菓子も、海外の生徒にとっては新鮮な日本文化です。参加した生徒たちは興味を示し、楽しみながら体験してくれました。
一方で、書き方や折り方、知育菓子の作り方を英語で説明することには難しさもありました。長く複雑な文章をそのまま英訳するのではなく、相手が理解しやすい短い言葉に置き換える必要があったからです。
この経験は、現地インタビューでも必要となる「相手に伝わるように話す力」を実践的に学ぶ機会になりました。

JTBへのインタビューで見えた「想定外の不便」
現地での探究活動では、外国人旅行者向けのツアー企画に携わるJTBへインタビューを行いました。
質問したのは、異なる宗教や食文化を持つ旅行者を受け入れる際、どのような点に配慮しているのかということです。
インタビューでは、同じイスラム教徒であっても、求められる対応が一律ではないことを学びました。ムスリムフレンドリーという案内で利用できる人もいれば、正式なハラル認証を必要とする人もいます。「外国人」「ムスリム」と大きくまとめるのではなく、一人ひとりの基準を確認する必要があるという気づきでした。
さらに、四国を訪れた際に不便だったことを尋ねると、返ってきたのは、なおかさんが予想していた宗教や食事とは異なる回答でした。
それは、「ゴミ箱が少ないこと」です。
シンガポールの街中では、道の近くでゴミ箱を見つける場面が多く、日本との違いを実感したといいます。長い距離を歩く遍路道では、旅行者がゴミをどこまで持ち歩くのか、どこで処分できるのかという情報も、快適な巡礼環境を考えるうえで重要になります。
事前に考えていた課題だけを確認するのではなく、現地の人に直接聞いたからこそ、自分では想像していなかった視点を得ることができました。
JTBで学んだ、食の選択肢と情報発信の重要性
同じJTBへのインタビューでは、ヴィーガンやベジタリアンなど、食文化の異なる旅行者への対応についても話を聞きました。
そこで指摘されたのは、日本ではヴィーガンやベジタリアンが利用できる店や料理の情報を見つけにくく、旅行者が選択肢を判断しづらいという課題です。

四国遍路は長い距離を移動するため、毎日の食事を確保できるかどうかは重要です。対応できる店舗があっても、英語で情報が発信されていなければ、海外から来た巡礼者には存在が伝わりません。
特に香川県の代表的な食文化である讃岐うどんでは、いりこやかつおなど、動物性の素材をだしに使う店舗があります。見た目に肉や魚が入っていなくても、だしの原材料によっては、ヴィーガンやベジタリアンが食べられない場合があります。
インタビューを通じて、昆布など植物性の素材を使っただしを用意することや、基本の料理を植物性にして、希望する人が肉などを追加できる形にすることなど、選択肢の作り方を学びました。
すべての店舗が同じ対応をすることだけが解決策ではありません。対応できる店、使用している食材、選べるメニューを整理し、必要な人へ正確に届けることも大切です。
なおかさんは、自分のお遍路体験を交えながら四国の魅力を発信し、ヴィーガン・ベジタリアン・ハラルなどの情報を分かりやすく届ける必要性を感じました。
英語で聞き、質問する力と、一人で動く力が育った2週間
2週間の留学を通じて、なおかさんは英語で相手の話を聞き、質問する力と、自分で考えて行動する力の両方に成長を感じました。
留学前は、家族と一緒でなければ外出する機会があまりなかったといいます。しかし、シンガポールでは学校へ行くことも、調査先を訪問することも、休日に観光することも、基本的に自分で判断して行動しなければなりません。
リトルインディアやガーデンズ・バイ・ザ・ベイなどにも一人で足を運び、バスやMRTを使って街を移動しました。普段とは異なる交通環境の中で、行き方を調べ、間違えたら修正しながら目的地へ向かう経験を重ねました。
なかでも、自分自身の変化として特に強く実感したのが行動力です。
行動力が一番成長できたと思います。

英語についても、さまざまなアクセントに慣れ、相手が話している内容を聞き取れる場面が増えました。
JTBへのインタビューは英語で行いました。日本人スタッフの補助も受けながら、相手の回答を聞き、必要な質問を続けることができました。教室で英語を学ぶだけでなく、実際の探究活動で英語を使って情報を得られたことは、大きな成果です。
一方で、会話が続くとすべてを理解することが難しい場面もあり、「もっとリスニングの練習をしてから来ればよかった」という次の課題も見つかりました。短期間でも英語でヒアリングできる力が伸びたからこそ、さらに学びたいことが具体的になったといえます。
英語で聞き、質問し、必要な情報を得る力。そして、分からない場面でも諦めず、助けを借りながら目的を達成する行動力。その両方が、今回の留学で得た大きな成長でした。
現地生活で役立ったものと、これから留学する人への準備アドバイス
実際に生活してみて分かった、等身大のアドバイスも教えてもらいました。
まず、シャンプーとリンスは別々に持参するのがおすすめとのこと。なおかさんはリンスインシャンプーを持参しましたが、使用後に髪のきしみが気になったためです。
また、現地生活ではChatGPTも活用しました。寮の洗濯機や電子レンジの使い方を確認したり、目的地までの移動方法を調べたりと、身近な困りごとの解決に役立ったそうです。ただし、安全や施設の利用条件など重要な情報については、現地スタッフや公式案内でも確認することが必要です。
食文化では、苦手だったパクチーには最後まで慣れなかった一方、ラクサやココナッツジュースがお気に入りになりました。日本では苦手だと思っていたものを、現地で試したことで好きになるという発見も、留学ならではの経験です。
トビタテの準備は「早く始めるほどいい」
なおかさんがトビタテを知ったきっかけは、学校の廊下に貼られていたポスターでした。「トビタテ」という名前に惹かれ、さらに同じバスに乗っていた高校の先輩が、トビタテを利用してスウェーデンへ留学したと聞いたことで、応募への気持ちが強くなりました。
ただし、興味を持ってから実際の計画を完成させるまでには、多くの準備が必要でした。
応募書類には字数制限のある複数の設問があり、留学の目的、現地で行う探究活動、帰国後の社会還元などを具体的に言葉にしなければなりません。書類に加えて、プレゼンテーションの準備も必要でした。
なおかさんは3月から本格的に準備を始めましたが、それでも時間に余裕はなかったと振り返ります。
また、語学学校について香川のエージェントへ相談したのは4月でしたが、エージェントからは、より早く相談した方がよいと言われたそうです。その後、5月に「シンガポールのCECが受け入れ可能で、日本人スタッフもいる」と連絡がありました。なおかさんの経験からは、まず語学学校など現地での拠点を確保し、そこから探究先やインタビュー先を広げていく方法が考えられます。
募集時期や必要書類は年度によって変更される可能性があるため、応募する際はトビタテ公式サイトと在籍校の案内を確認したうえで、できるだけ早く準備を始めることが重要です。
夏休みや冬休みに渡航する場合は、学校の宿題をできるだけ出発前に終わらせておくことも、なおかさんからの実践的なアドバイスです。
学んだことを、四国へ持ち帰る
なおかさんの探究活動は、シンガポールから帰国して終わりではありません。
帰国後は、渡航前にインタビューした四国のお寺へ現地で得た知見を報告し、宿泊施設などにも、ヴィーガン・ベジタリアン対応や情報発信の必要性を伝えていくことを考えています。
さらに、自分自身のお遍路体験と今回の留学経験を組み合わせ、SNSなどを通じて四国遍路の魅力を発信する予定です。
シンガポールで見つけた答えをそのまま四国へ持ち込むのではなく、地域の人と共有し、実現できる形を一緒に考えていく。そこまで続いて初めて、今回の探究が地域の変化につながります。
「自分がトビタテ生になれるとは思っていなかった」
最後に、これからトビタテへの応募を考えている高校生へ、メッセージを聞きました。
自分も、トビタテ生になれるとは思っていませんでした。
でも、自分が好きなことや探究したいことを全力で伝えれば、審査する人にも受け止めてもらえると思います。トビタテを遠い存在だと思わず、挑戦してほしいです。

最初から高い英語力があり、一人で何でもできたから留学できたわけではありません。
身近な場所で感じた疑問を、自分だけの探究テーマに変える。そして、うまくいかないときは計画を組み直し、周囲の力も借りながら一歩ずつ動く。その過程そのものが、なおかさんの行動力を育てました。
香川からシンガポールへ踏み出した2週間は、外国人にも歩きやすい四国遍路を考える旅であると同時に、なおかさん自身が「一人でも動ける自分」と出会う旅になりました。
シンガポールでの英語学習を、探究活動の力に
CECでは、英語を学ぶことだけを目的にするのではなく、英語を使って現地の人と話し、自分のテーマを深めたい高校生の留学についても相談を受け付けています。
トビタテの留学計画の中でシンガポールでの英語学習を検討している方や、CECの授業・留学期間について知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。
※CECへの入学が「トビタテ!留学JAPAN」の採用や支援対象となることを保証するものではありません。制度の要件・募集時期については、必ず公式情報と在籍校の案内をご確認ください。
取材・出典
- 本文中の留学経験、発言、現地での気づき:本人インタビュー(2026年8月実施)
- トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム 高校生等対象 第11期:文部科学省・JASSO公式サイト
- CECの学校情報:Canadian Education College公式サイト
※本人の体験やインタビュー先から得た見解は、すべての旅行者・店舗・地域に当てはまる一般的事実ではありません。
※写真は追って追加予定です。